名残

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手製本に入門した

図書館に通っていると偶然珍しい本と出会うことがままある。 今回は「はじめての手製本 〜製本屋さんが教える本のつくりかた〜」という本と出会った。 手作り感のある様々な本が映った色鮮やかな表紙に惹かれたのである。

ボンドや糸を活用したいろいろな製本方法が載っており、立ち読みしていてとてもワクワクした。 こんな感覚になるのは久しぶりだった。

思い返すと、小学生の頃にひとり遊びで簡易的な製本をしたことがあった。親がプリンタ用に買いだめしていたA4コピー用紙を何枚かもらって、それぞれ二つ折りにして内容を書き込む。そしてホッチキスで背を留め、その上に製本テープを重ねて貼るという手順だった。誰に見せるわけでもない、自分が見つめてペラペラめくって楽しむためだけの、ごっこ遊びに近いものであった。

この本をもとにして製本の基礎を把握したうえで、より本格的な本を数冊自作してみることにした。

具体的な製本方法を見ていく。選択しなければならないことは「本文紙をどうやって綴じるか」と「どんな表紙をどう接着するか」であり、これらの組み合わせで製本方法が決定する。

本文紙の綴じ方に関しては、

  • 背に接着剤をつけてまとめて固める「無線綴じ」
  • まとめて二つ折りにして中央を針金で留める「中綴じ」
  • 背から余白をもたせた位置で針金で留める「平綴じ」
  • ページの束同士を糸で繋ぎ合わせていく「糸かがり綴じ」

などが挙げられる。綴じられるページの数やページの開きやすさ、耐久性においてそれぞれメリット・デメリットがある。

表紙の形式に関しては

  • 本文とは別に仕立てた厚く頑丈な表紙で本文をくるむ「上製本
  • 本文紙の背に、直に同サイズの表紙をつけてくるむ「並製本

などが挙げられる。

今回は「無線綴じ・上製本」「糸かがり綴じ・並製本」の2冊を作っていく。

無線綴じ・上製本に挑戦

使ったもの

  • A4コピー用紙 (完成したときのページ数÷4)枚
  • A4色画用紙 2枚
  • 和紙おりがみ (寒冷紗のかわり)
  • 木工用ボンド (速乾ではない)
  • カッター
  • カッターボート (あると便利)
  • ステンレス定規 2つ
  • 輪ゴム
  • 竹ひご
  • クリップ
  • 大型本等、何かしら重しになるもの

手順

コピー用紙と色画用紙2枚をそれぞれ二つ折りにして、重しで折り目をなじませる。

向きを揃えて、コピー用紙を色画用紙で挟む。色画用紙は本の「見返し」という部分になり、本文紙と表紙を繋ぎ合わせる役割をもつ。

これから背のほうを加工するので、ズレないようにクリップで小口を固定する。

背幅をはかり、そこに40mmを足した長さに和紙おりがみをカットする (写真右側)

背にボンドを塗り、先程切り出した和紙おりがみを貼り付ける。これが背のなかで土台になる。この時はみ出したボンドは拭き取る。

背から左右にはみ出した和紙おりがみを折りたたみ、A4コピー用紙2枚で挟んだうえで重しをして一晩放置する。コピー用紙で挟んだのは、ボンドが垂れたときに台や重しが汚れないようにするため。

本文紙を乾かしている間に表紙を準備する。厚紙をクラフト紙で包んで表紙とする。寸法はこんな感じ。

↑の通りに厚紙とクラフト紙をカットし、重ねてみるとこのようになる。

厚紙とクラフト紙をボンドで接着し、背の左右に溝を作るための折り目をつける。このとき厚紙もクラフト紙も丸まってしまうので、本文紙を加工したときと同じように重しをして放置する。

↑が乾いたら、クラフト紙で厚紙の短辺・長辺をくるむ。

表紙と見返しを接着する。

表紙の溝の部分に竹ひごをかませて輪ゴムでとめたうえで重しをして、一晩放置すると完成。

完成したもの

糸かがり綴じ・並製本に挑戦

使ったもの

  • A4コピー用紙 (完成したときのページ数÷4)枚
  • B5色画用紙 1枚
  • 木工用ボンド (速乾ではない)
  • カッター
  • カッターボート (あると便利)
  • ステンレス定規 2つ
  • ミシン糸
  • 手縫い糸
  • 目打ち
  • クリップ
  • A5クリアブックカバー
  • 大型本等、何かしら重しになるもの

手順

コピー用紙を、4枚で1束にしてまとめて二つ折りにしていく。これからは束を連ねるように糸で縫っていく。ちなみにこの束のことを折丁(おりちょう)という。

4枚を重ねて折っているので当然小口(めくる側、背の反対側)は山の形になっている。これでは完成したときにページがめくりづらいので、はみ出した部分をカットして小口を整える。

すべての折丁を同じ向きで重ねてクリップで固定し、背のほうに等間隔に7つの印をつける。これらが糸を通す場所になる。

クリップを外し、印をつけた位置に目打ちで極小の穴をあけていく。端の穴は大きすぎると糸の玉結びがひっかからなくなって解けてしまう原因になるので特に注意する。

↓の動画の説明を参考に、ミシン糸で縫っていく。

縫い終わるとこんな感じ。このとき玉結びした位置の糸を外側に出しておく。

外側に出た糸も含めて、背にボンドを塗りこむ。

210mm x 363mm にカットした色画用紙と本文紙を接着し、背の角を指で整える。小口からはみ出した色画用紙はカットする。このとき思いつきで手縫い糸を挟み込んでスピンにしてみた。

重しをして一晩放置したあと、A5クリアブックカバーをつけて完成。

完成したもの

感想

糸で折丁を縫い合わせるところ以外は案外すんなりできた。製本のことだけを考えてもくもく作業する静かな時間が流れていた。普段パソコン作業が多い自分にとって、あまりパソコンと関係なくてリラックスできて実用性もあるので、かなり良い趣味になりそうだ。あと図書館で働くことも検討しているので、もしかしたらこの製本経験が本の修復の仕事に役立ったりするのかもしれない。